Feb 15, 2021

テーブルコーディネーター仕事

テーブルコーディネーターになるには

テーブルコーディネーターの仕事

テーブルコーディネーターの仕事についてのインターブユー。
ポーランド人の新聞記者が聞く。
レナタ:フィニッシング・スクールは若い女性のための学校ということですが、もともとヨーロッパにあったものなのでしょうか?あったものなのでしょうか?
ワンダ:ええ、スイスやイギリスには以前からあったようですが、アメリカではジョン・ロバート・パワーズという人がボストンに開校しました。テーブルマナーから会話術、化粧法、歩き方、洋服の選び方など上流社会の女性が心得ておくべきことを教える学校で、卒業生のなかには、グレース・ケリーやエヴァ・ガードナーがいます。

テーブルコーディネーターなるには

テーブルコーディネーター について教えて下さい。
レナタ:そこで何を教えられたのですか?
ワンダ:「ソーシャル・グレース」です。

レナタ:その意味を教えてください。
ワンダ:学校は青山にあったのですが、その食堂はヨーロッパ風の立派なものでした。家具も壁の絵も食器のノリタケも趣味のよいものばかりでした。そこでテーブルセッティングの基本を生徒に教えました。テーブルクロスのこと、ナプキンのこと、食器のこと、花のことなど、テーブルセッティングに関係することは何でも教えました。どの生徒も8時間、私が担当する「ソーシャル・グレース」を勉強することになっていました。勉強熱心な生徒ばかりでした。1980年代の終わり頃には、おなじような学校があちこちに登場してきて、まるでそれが何か流行のようになっていました。楽しい仕事でした。

レナタ:フィニッシング・スクールを日本語に訳すと花嫁学校ということになるのでしょうか?
ワンダ:あえて日本語に訳せばそういうことになるでしょうが、しかし正確ではありません。フィニッシング・スクールでは、花嫁学校で教えないことをたくさん教えていました。

        テーブルコーディネーター教室を1994年に主宰

レナタ:そこで8年間、教えた後、今度はご自分で「宮島ワンダ教室」を始められたということですが、そのとき成城に自宅を移され、そこで開校されたのでしょうか?
ワンダ:ええ、ヨーロッパのテーブルセッティングを教えるとなると、それにふさわしい場所でということになります。資金があれば銀座でも青山でも乃木坂でもよかったのですが、一人でやっていくとなると、残念ながら自宅でということにならざるをえません。

レナタ:いえいえ、いまでも生徒さんがたくさんいらして教室が続いているということは、大変なことだと思います。いまお話を伺っているこのすてきな応接間で授業をやっていらっしゃるのですね。
ワンダ:この応接間は「ヨーロピアン・クラシック・エレガンス」という考え方で統一されています。気に入るか入らないかはともかく、ヨーロッパのことに詳しくない人には、とても判りやすいスタイルだと思います。この部屋に入ってくるだけで、ヨーロッパの応接間がどんなものか判るはずです。この部屋の調度品は、全部、日本で買い求めたものです。テーブル、壁の絵、焼き物の食器、すべてヨーロッパのものです。20年がかりで集めました。授業は1年間の「基礎コース」と半年間の「体験コース」等があります。まず「基礎コース」で基本的なことを勉強していただいて、そのあとで「上級コース」で勉強してもらっています。

                             
レナタ:料亭といえば、伝統的な日本料理を食べさせるところのことですよね。そんなところをどうやって見つけたのですか?
ワンダ:フィニッシング・スクールで教えていたときに、竹下元総理大臣の娘さんが日本料理の勉強会を主宰していることを知って、参加することにしたのです。1991年から93年にかけてのことでした。場所は東銀座の料亭「米村」です。とてもいい経験になりました。毎月1回、土曜日に4時間から5時間、まずその日に食べる料理について講義があって、それから料理が高価な陶磁器に盛り付けられて出てきました。一回に払った料金は4万5000円でしたが、それなりの価値があったと考えています。
レナタ:1年間の「基礎コース」では、日本風のテーブルセッティングも教えているそうですが、なぜなのですか?
ワンダ:日本人には必要なことだと思います。日本には日本の伝統があって、それとヨーロッパ風の生活様式をどう調和させるかと言ったことは、むずかしいことですが興味深いことだと思います。

テーブルコーディネーター資格

レナタ:「基礎コース」では何を教えていらっしゃるのでしょうか?
ワンダ:季節や行事にあわせてテーブルをどう美しく飾るかということを教えていますが、もちろん生徒さんの生活スタイルも考慮に入れた内容になっています。
レナタ:お客様を招くときのテーブルということでしょうか、それとも毎日のテーブルということでしょうか?
ワンダ:どちらかと言うとお客様を招くときのテーブルということになります。お客様を招くとなると、それなりの食器などを用意する必要がありますから。誕生日とか結婚記念日、年中行事にあわせてお客様を招きテーブルをセッティングするということで教えていますが、生徒さんたちはヨーロッパとは違った家庭環境のなかで育ってきていますから、我々のようなカトラリーやナプキンを持っているわけではありませんし、テーブルや椅子があってもヨーロッパのものとは違います。陶磁器もありますが、やはりヨーロッパのものとは違います。そこで自分が持っているものをヨーロッパ風にアレンジするにはどうすればよいかといったことを教えています。伝統の違いというのはむずかしいもので、以前、自分で日本の正月用に食器を揃えようとしたことがありましたが、何を買い揃えてよいのやら判らなくて困りました。おなじことがヨーロッパの食器にもあって、たとえばテーブルに出すグラスは何でも構わないということではありません。そんなことを教えています。
レナタ:そうですね。グラスはいろいろな種類があって、それを使い分けるのは大変なことです。ほかの食器についてもおなじことが言えます。
ワンダ:もちろん、必要最小限のことしか教えていません。自分なりのスタイルを作るように教えています。自分にあわないと思うことは取り入れる必要はありません。ただ、必要最小限のことは知っている必要があります。まず必要な食器類をテーブルに並べ、お皿に出すべきものを考えて用意する。ただ、私の教室で料理は教えていません。授業時間は3時間しかありませんし、生徒さんは2人とか3人いますから、台所で料理の仕方を教えている暇はありません。ほかにやるべきことが一杯あります。授業で出す料理は私が予め用意しておきます。スープのような前菜、メインの料理、デザートのケーキの三皿を用意します。ヨーロッパでは日本のように料理に砂糖を使わないので、ケーキは不可欠です。ケーキで不足する砂糖を補うということになります。こうした知識も日本人には必要なことです。教えるためには日本料理についても知っておく必要があったので、銀座の料亭で2年間、勉強しました。

テーブルコーディネーター仕事
内容

レナタ:テーブルマナーも教えていらっしゃるそうですが…
ワンダ:わざわざ教えるということではなくて、必要に応じて言及するといった形に留めています。服装のこととか、作法のこととか。

レナタ:自宅の教室以外に六本木でも「ジョージアン・クラブ」で教えていらっしゃるとか…
ワンダ:「ジョージアン・クラブ」は10年前に個人が六本木に建てたイギリス風の建物で、とてもよく出来ています。まずセミナーを個室で行ったあと、地下のレストランでセミナーの内容に因んだフランス料理をいただくということをやっています。セミナーは10回ありますが、そのうちの6回は私が担当して、残りの4回は主人に頼んで料理や食べ物の歴史について話してもらっています。

レナタ:ご主人に教室の仕事を手伝わせていらっしゃるということでしょうか?
ワンダ:4年後には定年を迎えるわけですが、そのときに出来ることを今から考えておくのも悪くないのではないかと言っているのです。それに自宅と大学のあいだを往復するだけでなく、ときには違った場所に身を置いてみるのも悪くないのではないかと提案しているのです。

レナタ:教室に通ってくるのはどんな方たちなのでしょうか?
ワンダ:北は北海道から南は九州まで、日本中から見えています。たとえばフラワーアレンジメントの教室をご自分でもやっていらっしゃる方で、何か違ったことを授業に付け加えたいとか考えていらっしゃる方は、自宅で教室を開いていることを日常的な雰囲気があっていいとおっしゃります。また、最近、九州から見えていた方はパッチワークの先生でした。会津若松から見えていた方はお菓子の製造販売をしていて、お店のチェンを抱えており、60歳になったのを機に「第二の人生」を違った形のお菓子の製造販売に生かしたいと言っていました。彼女は丸1年、成城の教室と六本木の教室に通ってくれました。私の教室でヨーロッパ風のテーブルセッティングを学ぶこと自体を目的にしていた若い女性もいましたし、さしあたり何をしたらよいのか判らないので教室に来ているという若い子もいました。

レナタ:それなりのお金を払うことになると思いますが…
ワンダ:1回の授業で1万8000円いただいています。

レナタ:教室以外に会社の従業員向けセミナーも担当されていると聞いています。
ワンダ:欧米人相手の仕事をしている大企業の幹部向けのセミナーを担当していました。そんな人たちにとって大切なのはビズネス・ランチで何を食べるか、どのように話をするかなどと言ったことですが、この種のことで貴重な情報源になってくれているのが、いまワシントン市にあるIMF(国際通貨基金)で働いている息子です。

レナタ:それにワンダさんは、最近、テーブルマナーの本も出されたそうですし、いろんなところに記事を投稿されたり、ご自分で教室のホームページ(https://www.wanda-kyoshitsu.org)を開設して運用なさったりしているそうですが…
ワンダ:ええ、これからもポーランドで学んだことを日本の皆さんに教えていきたいと願っています。私の原点は、自分が生まれ育ったところなのです。

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