テーブルセッティングはリネン、磁器、カトラリー、グラスで構成されますが、
レストランと家庭では大きな違いがあります。レストランではフォーマルなものが
多く、リネンや皿、グラスには色の付いたものを使いません。デコレートしたカト
ラリーもあまり見られません。また、ウエディング以外はセンターピースに、ほとん
ど力 を入れません。セッティングは先ずリネン、次に皿、カトラリー、グラス、
せンターピースの順に飾りますが、フルセッティング(ディナーなど食事を頂ける
状態)では、リネン無しで19個の道具をセットしておきます。位置皿、パン皿、
テーブルナイフ、テーブルフォーク、フィッシュナイフ、フィッシュフォー ク、前
菜用ナイフ、前菜用フォーク、テーブルスプーン、デザートフォーク、
デザートナイフ、デザートスプーン、コーヒースプーン、バターナイフ、白ワイ
ングラス、赤ワイングラス、ゴブレット、シャンパングラス、ナプキン(白)と19個
あります。カトラリーの数や内容を見れば、何のメニューが出てくるのか分かりま
す。ただ、19個以外にスープ皿、ケーキ皿などのお皿が、後から出て来ます。
さて、ヨーロッパで作られた磁器を国別に見て行きましょう。以前、日本の女性に
もらって嬉しいティーカップを調査した資料がありますので、窯元を順に紹介して
行きます。
先ず、イギリスではウエッジウッドがあります。一七五九年創業の、英国の名門
であり、粘土に骨灰を混ぜるボーンチャイナが有名です。
英国の作家スマイルズの「自助論」で紹介されて以来、海外で暮らした経験がある
人たちのステータスとして定着しました。図柄は、ギリシャ神話の一場面など、
ストーリー性に富んでいます。特に、19世紀初頭の原画を元にデザインした
「ワイルドストロベリー」は人気があります。一九六五年の発売以来、売り
上げ上位を続けており、野イチゴの図柄が、英国庭園を思わせます。また、
「アレクサンドラ」は二〇〇四年に日本で先行販売され、プラチナのラインが幅広
い年代層に人気があります。王侯貴族の宝飾晶ティアラが描かれています。また
「フロレンティーターコイズ」は一三〇年以上前にデザインされ、ギリシャ神
話に登場する黄金の守神グリフィンを描いています。
ドイツではマイセンがあり、一七一〇年創業で欧州で最も長い歴史です。代表的なも
のは1739年完成した「ブルーオニオン」があります。竹の根元に双 剣を描いて
あるところが他のブルーオニオンと違います。書かれているのは桃、ザクロ、竹です
が、ザクロがタマネギに見えたことからこの名がつきました。
それぞれ、幸福、繁栄、長喜を表しています。また、日本に馴染みがある染め付け
で、使っている色が少ないので料理とのコンビネーションが取りやすいです。また
、現代マイセンを代表するシリーには「波の戯れホワイト」があります。ホワイトほか
青い花など多数の柄があります。アラビアンナイトなどもそうですが、白いお皿
に、波が書いてあるのではなく、型になっていることが特徴で
す。
また、ドイツにはフッチェンロイターのエステールなどもあります。
フランスにはエルメスがあります。一八三七年創業で、皮製品では有名ですが、
食器類への進出は一九八四年と比較的最近です。白地にHの文字を幾何学的 に描く
「リズム」などがあります。Hの色は赤緑青の3色です。一九三八年発表の
アクセサリーを描いた「シェーヌダンクル」は、四代目のロベールデユマエルメス
が港を散歩していたときにひらめいたデザインです。「シェスタ」は異国風の庭園を
思い描いています。
また、フランスで陶器はジアンがあり、パンジーが書いてある
アリスが有名です。
デンマークはロイヤルコペンハーゲンです。「ブルーフルーテッドプレイン」は
中国のバラと菊を描いています。横笛のような溝があるので、フルーテッドと呼ばれ
ています。一七七五年の設立当初からある伝統の柄で、職人の手描きによる
絵づけを続けています。日本にも、早く入ったので定着しています。
ちなみに、日本ではナルミの「ロージーレーン」があります。バラのつぼみが徐々に
咲く様子が描かれています。一九一一年に創業し、六五年にボーンチャイナの量産化
に成功しました。強度は世界有数の水準といわれています。
この他、南欧ではリチャードジノリ「イタリアンフルーツ」、中欧ではハンガリー
のヘレンド「ウイーンのバラ」、オーストリアのアウガルテン「ウインナーローズ」
などが知られています。
また、基本的に磁器はチャイナと呼ばれるように、ブルーオニオンやフルーテッドな
ど、中国から影響を受けたものが多いようです。ヨーロッパ人の嗜好で あれば建築
に、合わせて描かれています。また、同じ磁器でも色が土の質により、全然違いま
す。例えば、エルメスのリモージュの白と比べると、ジノリの白はブルーぽく、硬い
感じです。
次にグラスですが、格式を重んじる場合はステムウエアを使います。ゴブレットや
白ワイン、赤ワイン、シャンパンフルートがあります。最初は神に新酒を
捧げるために使い、王様、貴族、庶民に移りました。タンブラーはジュースやミル
クを飲む時の普段使いのコップです。昔の酒杯は獣角で、庶民はガラスを持
てず、置けば転がるので、タンブラーと呼ばれるようになりました。また、タンブ
ラーは食後に別室で、スコッチやウイスキーなどに使われます。
カトラリーは西洋人の家庭では銀器を買います。テーブルウエアは人間より寿命が
長いので、母から娘に誕生日にプレゼントします。
リネンは西洋の食卓にかかせないものです。特に、綿でなく光沢のある、麻が好まれ
ます。形はテーブルトップに合うもので、色はフォーマルな白です。
寸法は25cmあります。また、ヨーロッパではレースは小物で、食事の時でなく、
ティータイムの演出として使います。ディナーの時は白でしっかりしたリネンを、
ランチは目的に応じて、色を変えたりします。
お菓子はタルトプリュノー(上記ご参考)。アルザスの方でなクエッチという少し
細長いタイプのプラムを使っています。クエッチは蒸留酒にも使うプラムの種類です。
タルトはタルト生地にアーモンドクリームとセミドライのプラムを混ぜこん、焼き、
上にカスタードクリームを塗ります。上には赤ワインとレモンの皮で、コンポートした
プラムを乗せて、艶出しと乾燥を防ぐためにナパージュを上がします。最後に、ピスタ
チオとミントを飾りました。
5.イタリアの食文化はトルコ料理と根がおなじ? 宮島直機
トルコ料理がフランス料理、中華料理とならんで世界3大料理となっていることを皆
さんはご存知でしょうか。
トルコ料理は、食材も料理の種類も豊富にです。トルコ人はイラン高原からやって
きた遊牧民なので、羊を焼いて食べていました。
そこで羊の肉を使った様々な料理があります。また、イスラム教を受け入れたので、
アラビア半島の食文化の影響も受けています。
さらにローマ帝国の東半分を構成していたビザンツ帝国の首都コンスタンチノーブル
(現在のイスタンブール)を占領したので、ローマ帝国の食文化も受け入れていま
す。以前にお話しした南イタリアも、もともとはビザンツ帝国の一部だったので、
ローマ帝国にあった豊富な野菜、果物、さらにパン、オリーブ油、ワインを受け継ぎま
したが、このような食材や料理の豊富さが南イタリアと同じような形でトルコ料理
にも受け継がれたというわけです。
トルコ料理の食材は野菜、果物の他にハーブ類も豊富で、さらにインド経由でもたら
されたスパイス類も、コンスタンチノーブルで取引されていました。
また、イスラム教徒は酒が飲めないので、トルコではお菓子類が豊富です。そのなか
から、いくつか挙げてみますと、
○シャーベット:高い山の雪を氷室に保存しておいて、夏に氷菓子を作っていまし
た。トルコの皇帝だけが食べていた贅沢なお菓子です
○エズメ:アーモンドやピスタチオをすりつぶして砂糖で練ったもので、日本の生菓
子に似ています。
○ハウワ:白胡麻をすって砂糖で練ったもので、ポーランドなどにも広まっていま
す。
○ロクム:日本の求肥に似たお菓子。
○ババ:サバランの原型になったケーキです。ちなみに、「ババ」は「親父」の意味
で、「開けゴマ」で有名なアリババは「アリおじさん」という意味になります。
また、のちにルネッサンスの中心になる北イタリアのジェノバ、フィレンツェ、ベネ
チア、ミラノなどの都市はビザンツ帝国や、ビザンツ帝国を征服したトルコとスパイ
ス類の取引があったおかげで繁栄しました。
ちなみに、フォークはビザンチ帝国からベネチア経由でヨーロッパに入っています。
このように、イタリアの食文化とトルコ食の文化は根がおなじだということになりま
す。
◎ポーランドのクリスマス12月号なので宮島直機氏にポーランドで経験したクリスマ
スについて話していただきました。
ポーランドでクリスマスを経験しましたが、意外と知られていないのは、雰囲気が
日本の正月によく似ていることです。
これは、もともと正月もクリスマスも冬至の祭りが起源になっているからでしょう。
冬至には昼が一年中で一番、短くなり夜が一番、
長くなります。そこで、ひょっとすると太陽が死んでしまうかもしれないと心配され
ました。そんな太陽を蘇らせるために行われたのが冬至の祭りでした。
クリスマスは聖なる時間が流れる時で、日本の正月のように家族だけで静かに過ごし
ます。イブには特別な料理を用意します。肉は食べません。パン粉を付 け、フライパン
で揚げた鯉や茸など。ほかにキャベツや茸を入れた餃子(もちろん肉なし)、キャ
ベツや茸が入ったスープを食べます。このスープは出汁を干し茸(松茸に似た香りが
よい茸)から取ります。肉は使いません。
また、真夜中になるのを待って教会に行き、真夜中のミサに参加しますが、これなん
かは、まるで除夜の鐘を待ち、それから初詣に行くのとおなじです。帰宅して一休み
し、それから特別な料理を食べるところもそっくりです。
なお、ヨーロッパで肉といえば基本的に豚肉のことで、鶏肉(たとえば七面鳥)や魚
肉はクリスマスでも食べてよいことになっています。
ケーキも特別のものを用意します。ポーランド語で「マコービエッツ」と呼ばれる芥
子の実が入った焼き菓子(ポーランド語で芥子の実のことをマックと言います)や香
辛料が入ったジンジャー・ブレッドのような焼き菓子、卵と砂糖と胡桃で生地を作っ
たロールケーキなどです。
料理の数は13種類、用意します。これはイエスに従った12使徒とイエスの人数に合
わせた数です。最後の晩餐に因んだものです。また、突然の来客のためにテーブルに
余分にお皿を置いて、席を一つ用意しておきます。
◎ブッシュ・ド・ノエル
写真のお菓子はブッシュドノエル。まきの形をしたクリスマスの定番で、フランスの
お菓子屋では、ショーケースいっぱいに並びます。
最近はムースのほうが多いですが、バタークリームのロールケーキにしました。
クラッシックはこのような形をしています。中はコーヒー風味のスポンジで、間には
ラム酒風味のバタークリームとカスタードクリームを合わせたものが入っています。
バタークリームは敬遠されるイメー ジありますが、軽めの卵風味で食べやすくして
あります。
外側はコーヒー風味とバニラ風味と緑に色付けした3種類のバタークリームを使って
います。
きのこはメレンゲを乾燥焼きにしました。上にはココアパウダーと粉砂糖をふって
います。下は落ち葉をイメージするため、フィアンティーヌを付けました。